国力を高める(最終回) 世界の人々から求められるために

(日経「社説」2013/1/8付) 外交、科学技術、生活文化。日本が世界から求められる国であるために、強みとして生かしたい分野だ。人々が平和で豊かな生活を送るための貢献が、結果として日本の地位を高めることになる。すぐに規模を増やすのは無理だが、限られた予算や人員をうまく生かし、日本にしかできない貢献を工夫したい。昨年のノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥京都大学教授の研究は再生医療に大きく道を開き、対日感情が悪化する韓国や中国も「日本に学べ」とたたえた。科学技術の成果は人類共有の財産だ。独創的な結果を生み続ける国は世界の称賛を集める。高度成長期以降、海外で日本のイメージを高めたのが車や電気製品だ。 高温多湿な風土、都市への人口集中など、アジアの生活環境は欧米よりも日本との共通点が多い。増える中間層、とりわけ都市の若年層や働く女性のために、日本の生活産業が蓄積してきた快適で便利な暮らしのための商品やサービスが果たす役割は大きい。サービスの充実した高齢者向け住宅、鉄道と駅ビルを組み合わせた街づくりなど、眠れる資産はまだ多い。身近な場で日本の魅力を実感すれば、優秀な人材の日本企業への就職や、「本場」日本への観光、留学も増えよう。日本の好感度を上げ、多くの人に日本という国が「世界に存在してほしい国」だという思いを持ってもらう。そうした努力は「国家対国家」の摩擦が高まるとき、冷却材としても機能するはずだ。
(JN) 日本に地位を高めるということをどうとらえるかは難しい。ここでは人々の暮らしに貢献して行くことと考えれば、要は工夫なのだろうか。良いものをそれぞれの異質な場所での利用に当たっての技術を日本は持っている。そして、日本の教育力を途上国へ持って行くことであろう。経済力で金のばらまきの時代は終わった。我々はこの小さな国に閉じ籠っていたはならない。また、他国からの人の受け入れを積極的に行わねばならない。そのために教育機関は多様な機会を学生に与え、外への目を開かせることが肝心である。また、日本の原動力である中小企業が積極的に海外との交流ができる支援が必要である。このことは、世界の人々に求められるためだけでなく、国民に認められる国家のためにも、金のばらまきから脱却して、工夫のある行政を行ってほしい。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO50365920Y3A100C1EA1000/