まず隗(かい)より始めよ

  • (日経/春秋 2012/7/25付) 中国の故事に由来する味わい深い言葉は多い。「まず隗(かい)より始めよ」は、そんな成語の一つだろう。遠大な事業をなし遂げようとするなら足元から着手すべきだ、という意味。大津市の中学2年生が自殺した問題をめぐる平野博文文部科学相の発言、「いじめが深刻化する前に、全国の教育委員会から早く文科省に報告を上げてもらいたい」。「まず隗より」ではないのか、と。文科省といえば、福島第1原発事故の後、米軍の放射線測定にもとづく汚染地図の提供を受けていたのに、国民に知らせなかった。大切な情報をちゃんと発信せず、国民の安全と安心をそこなった印象は強い。国民が視野の真ん中に入ってこない、そんな役所体質が深く染みついているようにみえる。いじめについて文科相の言うことはもっともだ。けれど、お膝元の体質を改めないなら、上がってくる「報告」も何の役に立つのか、と思ってしまう。
  • (JN)大きい組織は自分たちの使命がなんであるのかを等閑にして、組織を守ることに専念する。それが個々の者にはわからないが、トップに立つ者ぐらいはわかってほしい。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO44128620V20C12A7MM8000/