88はハイル・ヒトラー

(日経「春秋」2014/5/18付) 子どもの頃「エイトマーン!」 劇画のヒーローではない、ABCと数えていって8番目がH。子どもなりの隠語でお互いをからかったのである。8やHが特別な意味を持つ国はそれで済まない。米国のP&G社がドイツで売り出した洗剤のパッケージに「88」「18」とあるのをとがめられ、同社が販売をやめた。数字には、従来より少量で洗濯できる性能を誇る意図しかなかったという。でHはヒトラーだ。だから、88はハイル・ヒトラーヒトラー万歳)、18はAとHでアドルフ・ヒトラーになる。会社は消費者の指摘でことの重さを知ったという。ドイツはナチスを礼賛することを法律で禁じる国である。販売中止の判断はやむを得ない。英語でいう「86」は、レストランなどで客を追い出すことを意味する。フランス語ではHが麻薬のハッシッシやヘロインを指すことがある。小集団の隠語が、気づくと普通の人々の口から漏れていたりもする。よくも悪くも変化してやまない言葉の生命力に、ついていくのは容易ではない。
(JN) 隠語は、ある小集団から始まり、メジャーになり、隠語でなくなることもある。H(エッチ)は、ある女子高生が変態的行動に、Hとしたことから今では、広く日本で使われる表現になってしまったとも言われている。88や18がハイル・ヒットラーやアドルフ・ヒットラーとは、日本では思いもよらない。日本プロ野球では18番はエース番号、ニューヨーク・ヤンキース黒田博樹は18番だ。ドイツでは、これは望まれない番号なのか。日本人なら、4は死、49は始終苦しむと嫌われているように、嫌われている番号が其処彼処にあるのか。グローバル社会の中で、ローカルなことも気にして行かねばならないと、恥をかくというより、他人の気分を害することになる。これは、小さな世界、例えば、学校や職場でも起きることであるのだろう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO71401580Y4A510C1MM8000/