ポリオ根絶の目標は達成できず、状況はむしろ悪くなっている

(日経「春秋」2014/5/8付) 安保反対デモで騒然となった1960年は、ポリオ大流行の年としても日本の戦後史に刻まれている。もっぱら小児マヒと呼ばれ、その年に5000人を超え、300人余が亡くなった。翌年も流行が続くなかで劇的な効果をもたらしたのが、ソ連などから輸入した生ワクチンだった。共産圏からの調達には慎重な声もあったというが、古井喜実厚相が決断を下して1300万人分の緊急輸入が実現し、患者はみるみる減る。80年を最後に日本で通常のポリオ患者は出ていない。世界保健機関(WHO)は先日、パキスタンやシリアなど10カ国で感染が拡大しつつあるとして緊急事態宣言を出した。WHOは2000年をポリオ根絶の目標にしていたが達成できず、ここへきて状況はむしろ悪くなっているようだ。背景には甚だしい貧困があり、戦争や内乱がある。09年に世界の患者の半数を抱えたインドは、その後わずか数年でポリオ制圧を果たした。危機はきっと克服できると、事実が教えている。
(JN) ウィルスとの闘いは、人類が存在する限り永遠に続くのではなかろうか。但し、ポリオを根絶をさせることは直ぐにはできないが、限りなく感染者を少なくすることであろう。それには、それぞれの地域が自覚して予算を準備するために、インドのようにワクチンの徹底した接種から生活環境の改善まで行うことである。この健康改善は、国家の発展にもつながる。国民を守ることから国は、発展する。それは、ポリオのような健康問題から、部族間、宗教間、階層間などの争いからも弱き国民を守り、安心して産業発展に尽くせる条件を作ることである。貧困からの脱出は、産業を興し、失業者を減少させることである。低所得国家における弱き国民のその第一は、子供たちであり、次に女性である。所得の多くを分け合っている先進国は、このために支援を惜しまないことであり、それが自分たちを守ることでもある。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO70857690Y4A500C1MM8000/