タイに未来図を自ら描く知恵を、努力を、と願う

(日経「春秋」2014/5/14付) タイのプミポン国王は地図好きで、国内のどこを視察するにも専用の地図をつくって持っていく。その国王も86歳、健康の不安が伝えられ、地方への旅行も差し控えているようだと。この国の民主主義が持つ「絶妙」とも評された国王の神通力も今は昔、ということか。混乱はもはや普段の景色になってしまった。先週、人事をめぐり職権乱用があったとの憲法裁判所の判決でインラック首相が失職した。2月の総選挙には無効の裁定が下り下院は不在だ。だから、立法と行政はいま体をなしていない。農村部・貧困層がタクシン派なら都市部・中間層が反タクシン派と色分けはできようが、国の実情はちぎれた地図のようにもみえる。日本とも縁の深い国だ。大きな1枚の未来図を自ら描く知恵を、努力を、と願う。
(JN) 地図を見て、旅行計画を立てるのは、楽しい。そして、そこへ行き、その風土を体で感じることは更に楽しい。でも、それは、平和であるからだ。地図は、勢力図でもあり、過去に有った領地・勢力争いを見るのは楽しくもあるが、現実の勢力争いは、御免である。勢力争いを何とかならないものか。人は小さい生き物であると感じざるを得ないこの競い合い、賢く大きくなれないものか。民主主義とは、熟議を尽くして、未来の地図を考えねばならないはずだ。タイのこの争いを治めることができるのは、国王ではなかろう。お坊さんでもないだろう。さて、国民から救世主が現れるのか。未来地図は、ちぎられてしまうのか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO71171300U4A510C1MM8000/