「能(よ)く集め能く散ぜよ」

(日経「春秋」2014/5/10付) 渋沢栄一が先行き、心配でならなかったのが1890年開業の帝国ホテルだ。景気の波に翻弄され、業績は低調。そこで彼は開業後20年がたとうとしていたころ、巻き返しに動く。ひとつは有能な支配人のスカウトだった。後に経営を立て直す美術商の林愛作を広い人脈を使って獲得。渋沢は「論語と算盤(そろばん)」で、「能(よ)く集め能く散ぜよ」と書いた。世の中から集めたお金を、企業の活動が活発になって社会に元気が出てくるように使えという意味だ。未来への投資に企業はどれだけ踏み出せるだろうか。「大なる欲望をもって利殖(利益)を図ることに充分でないものは、決して(前に)進むものではない」という。「アニマルスピリット」が企業活動には大事なのだと言っているようにみえる。
(JN) 世の中、合理的に説明できないパワーというか、勘というものがある。それも、実はその人が長く経験してきたことを基に出てくるものなのであろうが、なぜ、そう出てくるかがわからない。勘所は、体で覚えて行くしかないのか、教科書やマニュアルには、ここはツボとか肝とかを記すことはないであろう。理論をよく知っていても、それを活用するには、「アニマルスピリット」が必要だ。それは、どんな世界でもある。渋沢栄一には、それが生まれながらに持っていたわけではなかろう。彼がその力を得て来たことを分析し丁寧いに説明できるものもない。それが人の力なのか。携帯やパソコンの世界に閉じ籠っているのでは得られない力であろう。さぁ、人の渦の中に飛び込んでいこう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO70989260Q4A510C1MM8000/