殺人ロボット兵器を国際的に規制するための議論

(日経「春秋」2014/5/15付) テレビアニメ「機動戦士ガンダム」が初めて放映されてから、35周年を迎えたという。いまやファンは世代をまたぎ、国境さえもまたいで広がる。一大市場を築きあげた観がある。優れたSFは時に、科学技術と人間の相克を鮮やかにあぶり出す。未来の戦争を題材とするガンダムは、とめどない兵器の革新が人類の生存さえ脅かす様を描いていた。「寒い時代だとは思わんか」。わずか数シーンにしか登場しない脇役の一言が鋭く胸に響いたのも、ヒトの業のようなものを感じ取ったからだ、と思う。いわゆる殺人ロボット兵器を国際的に規制するための議論が、ジュネーブで始まった。人間の判断を通さず、いわば兵器自らの判断で、標的を選び、攻撃するかどうか決める。実戦配備こそされていないが、開発が進んでいるらしい。本当に「寒い時代」を招かないよう、知恵を絞っていかなくては。
(JN) ロボット兵器が主役に躍り出れば、正にゲームの世界である。しかし、そこには人類をはじめとする生物に対する殺戮もある。その破壊力を人道的見地のないその破壊は、考えただけでも恐ろしい。この社会から戦争というものは消え去らないのか。技術革新は、破壊兵器を発展させ、否応なしに殺傷力は高まって行くのであろうか。子どものころから見てきた物語では、ヒーローは力強く、また弱い者の味方であるが、現実はそんなヒーローはあらわれない。一人の勇者で一発逆転などはない。私たちは、心ではヒーローを求めても良いが、現実ではそれぞれの者や組織が一つ一つ改善していくしかない。この国際規制も、その一つとして機能するものになって欲しい。人々の平和への熱い心で、「寒い時代」は避けたい。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO71222440V10C14A5MM8000/