3Dプリンター、かくなる福音をもたらす道具

(日経「春秋」2014/5/13付) たとえば交通事故で失った顔の骨をそっくりそのまま再現し、患部にぴたりとはめ込めば容貌は元通り――。3Dプリンターを使った医療革命のなかでも実用化目前の技術だ。かくなる福音をもたらす道具も、ひとたび悪用されたら……とは当初から懸念されていたことだ。さまざまな武器をテロ組織などが量産できてしまう。カード情報を盗み取るスキミング機器も密造できる。心配していたとおり、邪心に満ちた使い手はやはり日本にもいた。3Dプリンターで作った拳銃を所持して逮捕された男は、かねて「銃を持つことは基本的人権」などとツイッターに書き込んでいたという。だからしっかり規制しろという声が、あちこちから上がっている。たしかに対応を急がねばならないのだが、それでこの新技術の大いなる可能性を封じてしまうなら正が邪に屈する構図となろう。多くの使い手に罪はないのだ。よこしまな心の持ち主が操ればプリンターから魔物が現れて……。そんな機能はつかぬものか。
(JN) 技術進歩は、夢を実現してくれる。それは、良いこともそうだ無いことも。しかし、良いこととそうでないことは、時、場所及び人等によって、解釈が異なってくる。それを3Dプリンターについて、規制せよとは中々の難問である。3Dプリンターに限らず、それを使う人の問題であるので、様々な技術革新によって現れる技術を規制していくことは難しいし、技術革新を一般化する妨げとなる。私たちは、素晴らしい技術を作り上げるとともに、それを使う人材もバランスあるものに育て上げて行くことが必要なのであろう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO71108250T10C14A5MM8000/