千年を経ても帝国気質は容易には変わらないらしい

(日経「春秋」2014/5/22付) 「渭城(いじょう)の朝雨軽塵(けいじん)を●(さんずいに邑、うるお)す 客舎(かくしゃ)青青(せいせい)として柳色(りゅうしょく)新たなり」(雨が洗った柳の柔らかな新芽が目にしみる)。詩人王維が阿倍仲麻呂に送別の詩を贈ったことでも知られる。仲麻呂は10代で唐に留学し科挙に合格、玄宗皇帝に仕えた。高官となり、なかなか帰国できない。50歳を過ぎてようやく許された。帰りの船が暴風雨に遭う。安南の総督を務めたのち73歳で長安に没した。船が漂ったであろう南シナ海。その島々の領有権をめぐる中国とベトナムなどの対立が激化している。石油などの海洋資源がからむだけに、双方が譲らない。唐は軍事力で広大な領域を治めた大帝国だった。重要な商業拠点である安南が奪われると軍を動かし奪還している。経済権益の争奪戦はいまも激しいが、武力でのごり押しは国際社会が許さない。そういえば習近平主席は「中華民族の偉大な復興」を目標に掲げていた。千年を経ても帝国気質は容易には変わらないらしい。
(JN) 巨大帝国の中華人民共和国は、拡大路線であろう。永続革命の共産主義であろうと、それをさらに包括する世界資本主義であろうと、量的拡大が生命線である。更に「ジャイアン」魂の中華思想は、自分の中心のごり押しであり、「のびた」のような弱小国は堪らない。愚かな人類にはこれを穏やかに解決する方法は、持ち合わせていない。経済的破壊か、火力による破壊か、どこかの首相はこの火力の整備に躍起である。20世紀の前半のようにまた殺戮の時代を向けるのであろうか。愚かな人類も、少しは賢くなってはいないか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO71589960S4A520C1MM8000/