職場や教室に、尊敬し合う同志は何人いるだろう。

(日経「春秋」2013/8/24付) 修行僧の顔から、ふと子供の笑みがこぼれた。4千本安打を達成、仲間が祝福に集まってきた。「記録が特別な瞬間をつくるのではなく、僕以外の誰かがつくってくれる」。イチロー選手はそう語った。初めに驚いた表情を見せたのは、試合を中断してまで皆がぞろぞろと一塁に駆け寄るとは思っていなかったからだろう。イチロー選手の顔は、戸惑いから半泣きに変わっていた。自分にはそんな仲間がいるだろうか、と自問してみる。同じ学校に通ったり、一緒に食事をしたり。共に行動する時間が長いほど絆が強くなった気がするが、なれ合いと団結は紙一重かもしれない。ふだん百の言葉を交わすより、常に己を磨き、一つの業績をたたえ合う。職場や教室に、尊敬し合う同志は何人いるだろう。イチロー選手は8年前、「前は相手のミスを待っていたけれど、今は相手のベストを待っている。自分が本当にベストだったと思うためには、自分だけでなく相手のベストも必要だ」。実力で頂点を目指す者にとっては、最高の敵は最大の友でもある。
(JN) 9人の名簿に入るために互いに競い合っている者同士であるだけに、その磨き上げた結果に対してはお互いに喜びあえるのであろうか。あの瞬間の一郎の顔は嬉しそうであった。互いの努力の結果がチームを勝ちに導き、そのお蔭で自分はメンバー堕ちしてしまうかもしれない。失敗すればチームが負けるが、失敗したものはベンチを温める、いやマイナーに落とされるかもしれない。であるから瞬間の笑みのために、厳しく自分を更に磨き上げていく。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO58878910U3A820C1MM8000/