世界に羽ばたくブランドを増やそう

(日経「社説」2013/8/11付) 日本企業はアジア企業には激しく追い上げられ、収益力では米欧勢に見劣りする。もう一度世界で輝くために何をすべきか。ブランド力の向上こそ、大きなカギである。日本企業はよく「技術で勝って事業で負ける」といわれるが、その典型が時計産業だ。スイス最大手のスウォッチグループはを大きく発展させたニコラス・ハイエク前会長は日本企業を評して、「数量を追うだけの価格競争をいつまでも続けるべきではない。10ドルで売るようなブランドの商品を妻や友達にプレゼントしたい人がいるだろうか」と鋭く指摘したことがある。そもそも強いブランドとは何だろう。単に「品質がいい」「高機能」というだけでは不十分。それに加えて「かっこよさ」や「驚き」「感動」「親しみやすさ」といった人間の感性や情緒に訴える魅力が必要だ。目には見えない「おもてなしの心」もブランドを育てる素地になる。日本にも期待の芽はある。アシックスは米ナイキや独アディダスといった世界の巨人を向こうに回し、ランニングシューズの市場で非常に強力なブランドを築いた。ファーストリテイリングが展開する日用衣料の「ユニクロ」はファッション性と独自の機能性を組み合わせ、反日機運の残る中国でも人気を博している。ニューヨークなどの世界の大都市の目抜き通りに大型店を出店するのも、ブランド構築投資の一環である。これまで日本発の世界ブランドといえば、「トヨタ」をはじめとする自動車と「ソニー」などの電機系にほぼ限られていた。これに対して、例えば米国発のブランドはコカ・コーラのような飲料からマクドナルドなどの外食、さらにはIT系のアップルやグーグルまで多彩な顔ぶれが世界で存在感を発揮する。輝くブランドの背後には、個性豊かなリーダーのいることも多い。製品のデザインや操作性にこだわり抜いたアップルのスティーブ・ジョブズ氏や、「ウォークマン」の楽しさを自分の言葉で世界に発信したソニー盛田昭夫氏がその典型である。「我こそは」と思う経営者は世界を魅了するブランドつくりに挑戦してほしい。
(JN) 日本は立ち食いソバやからファーストフード店ぐらいにまではなったのであろうが、まだ低廉な商品を数売っての勝負には変わりない。安くてまあ安心だからここへ行く、これをここでどうしても食べたいという店にしたい。何世代にも亘って引き継いでいかれるブランドである。会社は分裂融合を繰り返し生成成長没落ても、ブランドは常に引き継がれ成長して行く、それは生き残り競争でもあるのであろうか。「和」というか空気を大事にする日本の風土からは個性豊かなリーダーというものが日本には育ちにくいのか。とにかく、自由化が進む中、世界の中で輝き生きて行くためには、あらゆる分野で、我々は日本ならではのものを作っていかねばならない。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO58382410R10C13A8PE8000/