ヴェルディ、ドラッカーに続きたい

(日経「春秋」2013/8/7付) ヴェルディの作品中でも指揮者や歌手が入念に準備する名作が「ファルスタッフ」だ。この喜劇は、音楽と台本が見事に調和した円熟の作品といわれる。完成は1893年ヴェルディ80歳の頃だ。「いつも失敗してきた。だから、もう一度挑戦する必要があった」と創作の動機を語ったという。後年、その言葉を知って心を打たれたのが大学生のピーター・ドラッカーだった。いつまでも目標を持ち続ける姿勢を教えられたと書いている(「プロフェッショナルの条件」)。「経験が豊かになると、それが作品にも投影する」とドラッカーは言った。1989年、80歳を目前に著した「新しい現実」は、国家の枠を超えた経済の相互依存関係や技術革新など世界の変化に目を注ぎ、ソ連の崩壊も洞察した。体力は落ちても思考力や創造性は磨ける。2人の歩みが示している。平均寿命が女性は世界一、男性も5位という日本が豊かになるには、もっともっと高齢者に活躍してもらうことが必要になる。問題になっている現役世代の重い社会保障負担も、自立する高齢者が増えれば和らごう。ヴェルディドラッカーに続きたい。
(JN) いつまでも目標を持ち続けるにしても、その目標を今も持たず、只管会社のために働いてきた者には難しい。組織の枠以外にも、個々人に目標を持ち、また責任も個々人の自覚を持たねばならないのであろう。でも私たちは、才能ある芸術家でも、優秀な経営学者でもないので、それは難しい。しかし、いつまでもお国の制度に頼ってもいられないので、自立する高齢者としての目標を立てて行くことを考えても良いのではないか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO58210110X00C13A8MM8000/