甘利明さんが「同じ釜の飯を食って団結しよう」と

(日経「春秋」2013/8/6付) 夏は合宿の季節である。合宿といえば緊張もするし、ワクワクもする。青春の合宿の記憶は汗と涙の味がする。TPP交渉の作戦を練るため、約100人の官僚たちが研修所で合宿をした。担当大臣の甘利明さんが「同じ釜の飯を食って団結しよう」と熱く檄(げき)を飛ばしていた。まるで軍隊のようなその映像を、交渉相手はどう見ただろう。「合宿」の濃厚な語感に、ぴったり合う英語は見当たらない。強いていえば「トレーニングキャンプ」だろうか。参加した若手の官僚から「久しぶりに脳味噌が動いた」と興奮気味の声も聞こえてくる。これまで日本の通商交渉チームは、諸外国から評判がよくなかった。立場が異なる外務、農水、経産の3省が同席し、相手国は同時に3人を相手にしなければならないからだ。合宿で事務方の結束力は高まっても、指示を出す肝心の政権や与党はどうか。官僚に団結を促した甘利大臣の言葉を、そのまま政治家に贈りたい。
(JN) 官庁の縦割りをまとめるのが政治家である。様々な要望を公平に対応していては、良い政策は生まれない。政治家がいかに、日本の方向性を見据えて、脳味噌を動かすかであろう。従って、多数官僚を集めて合宿を行うことより、政治家たちの基礎トレーニングから実践トレーニングまで行うことが必要であはないか、否、政治家は既にその基層から応用力まで持っていなければならないはずである。さて、この合宿費はどこから幾ら出ているのであろうか。この間の官僚たちの時間はどうなっているのであろうか。甘利さんのポケットから出ているのではあるまい。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO58166190W3A800C1MM8000/