衆院選の無効判決が出たことが一度だけある

(日経「春秋」2012/12/18付) 戦前の大審院で、衆院選の無効判決が出たことが一度だけある。1942年の「翼賛選挙」で政府や軍部による妨害を受けた非推薦候補の訴えにこたえ、その判決は下された。入念な検討を経たうえで、終戦の年の3月に下した判断が「之ヲ無効トス」であった。時代を考えれば命がけの判決というほかないのだが、司法というものは、ときにそれほどまでに良心に従おうとして苦闘する。混乱を憂えるその逡巡(しゅんじゅん)につけ込んで国会は定数是正をさぼり、とうとう違憲状態のまま終わった今回の衆院選だ。政権交代の興奮を尻目に、さっそく選挙の無効を求める訴訟が起こされた。とはいえ「0増5減」の法案は成立しているから最高裁も大人の判断をするだろう――。そう高をくくる声も少なくないが、かの大審院判決だって世の「常識」を蹴飛ばし、当時の鹿児島2区では実際に選挙をやり直した。こんど無事に信任された10人を含めた最高裁判事たちの胸にも、去来するものがあるかもしれない。
(JN) 議員を選ぶための投票とは民主主義における国民の唯一と言っていい権利であろう。これが不公平であることを改善しないことは国会議員として有るまじきことであり、最高裁は断固たる判決を下すべきであろう。あの戦前の時代にできたことが、この時代にできるであろう。我々は最高裁の10人に対して、次回の総選挙の際には、この行動を活かすことができるであろうか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO49695190Y2A211C1MM8000/