歴史に学ばなければ人は成熟しない

(日経「春秋」2012/12/7付) 自分が生まれる前に起きたことを知らないでいれば、ずっと子どものままだ――。共和政ローマ末期の政治家、キケロはそう書いた。キケロは、独裁に反対し共和制を守ろうとした。カエサルの暗殺は歴史に名高い。キケロも政敵に追われる身となり、結局は暗殺された。紀元前43年のきょうのことだそうだ。それから20年もたたないうちにローマ帝国が誕生した。その結果だけみれば、カエサルの方がキケロよりも冷徹に政治を見通していたといえるのかもしれない。政治家キケロの著作や弁論が後世にもたらした影響は計り知れない。18世紀のフランスの哲学者で、近代社会の基本原則となる三権分立をとなえたモンテスキューも、キケロを踏まえて思索をめぐらせた。やはり歴史に学ばなければ人は成熟しない、と思う。
(JN) 長大なローマ帝国及びその前史は魅力的であり、未来へ教えが込められている。カエサルなど共和政時代は政治家が私財を擲って公共施設の充実も図った。軍人でもあり、命もかけていた。命の大切さや戦争の怖さも知っていたであろう。キケロは自分の意志を貫くために命懸けでアントニウス弾劾演説をおこなっている。自分が生まれるずっと前のことであるが、皆さんご承知であろう。特に、戦後の日本の歴史は十分承知しているはずだが、そのところをお忘れの方が多い。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO49284010X01C12A2MM8000/