「戦争ってものは、なっちゃってからでは止められません。」

(日経「春秋」2012/12/11付) 昭和30年代あたりの日本映画を見ていると、小沢昭一さんがやたら出てくる。脇役が多いけれど、作品をぴりりと引き締めて存在感抜群で、あとあとまで忘れられない。やがてラジオで「あしたはお父さんの小遣いについて考えるのココロだ〜」と例の名調子の番組が始まって、小沢さんといえば昭和のおじさんの哀歓、ということになる。名前のとおりのその時代を生き、思いを語り、体現した人が83歳で亡くなった。海軍兵学校予科に進むが半年ほどで敗戦となり、価値観の大転換を目の当たりにする。だから小沢さんの昭和物語はとてもノスタルジーばかりでは済まされず、苦く切なく恥も少なくない。「戦争ってものは、なっちゃってからでは止められません。なりそうなときでも駄目。なりそうな気配が出そうなときに止めないと」。かつてお話をうかがったさいに、こう力をこめていたのを思い出す。言い残しておきたいことが、まだまだあっただろう。
(JN) 小沢昭一さんとの出会いは、小学校の時に観た「橋のない川」の嫌な地主の役であったか。正に昭和30年代、主役の力を引き出すその力に存在感抜群であったのであろう。それからずっと「小沢昭一的心」は、エッチなことから真面目なことまで、楽しませてもらった、否、学修した。昭和一桁の人たちは二十歳前後で価値観の大転換を受け入れて、その後、昭和は経済成長、イケイケどんどん、そういった方々が眠りにつき始め、日本は戦後を終わろうとしているのであろうか。戦後が終わっても、戦争を始めてはならない。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO49422360R11C12A2MM8000/