同潤会アパート、解体を控えなお存在感を放つ

(日経「春秋」2013/5/19付) 同潤会アパートに空室はないだろうか。その建築の、昭和モダンの濃密な空気に引かれたのは久世さんだけでなかっただろう。関東大震災の復興事業として、内務省同潤会なる組織を設けて鉄筋コンクリートの集合住宅を建てた。東京と横浜に計16カ所。しかし近年は老朽化が進み、最後まで残っていた台東区の上野下アパートがついに来月から取り壊される。震災後の新しい時代にふさわしい住空間を企画した人たちの苦心の結晶である。やがて戦争が始まりそれどころではなくなるのだが、同潤会が掲げた集合住宅の理念は戦後の団地やニュータウンに引き継がれていく。さていま、東日本大震災の被災地に世紀を超えて価値を保ちつづける何かが生まれつつあるかどうか。解体を控えなお存在感を放つ上野下アパートを見上げれば、そんな思いが胸にわく。
(JN) 地震国日本は地震等による建築物の崩壊を機会に創造的改革を行ってきた。それは常日頃、改善を考えているから、対応ができるのであろう。そして、その作成にあたっての理念が大事である。目先のことに左右されない理念である。それが同潤会アパートにはあったから、最後の解体に注目を浴びるのである。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO55215770Z10C13A5MM8000/