「いばった建築は嫌い」

(日経「春秋」2013/4/4付) 新しい歌舞伎座は和風の建物と高層ビルを一体化した造りである。空に伸びる縦の直線と、瓦屋根のなだらかな横の曲線が、美しく溶けあっている。設計した建築家の隈研吾さんが「いばった建築は嫌い」と話していた。建物は自己主張せずに、内にある空間と人を黙って包み込む。もう一つの古典芸能、能楽の隠れた名所が広島県福山市にある。喜多流シテ方の大島家が個人で建てた大島能楽堂だ。住宅街の普通の一軒家に見えるが、玄関をくぐると中に立派な舞台がある。その質素な建物に次々と人が訪れてくる。四代目の大島政允さんは「維持するのが大変」と言うが、文化の拠点を守るのが楽しそうだ。この町では能楽への敷居がずいぶん低い。「いばった建築」の対極にあるような建物の力かもしれない。
(JN) 「いばる」とは、「広辞苑」によれば、「ことさらに威厳を張って強そうに、また、えらそうにする」ことである。建物も人も、「いばった」態度ではコミュニケーションが取れない。お互いに損である。「いばる」ようなことはやめましょう。また「いばる」ような人材をつくらないようにしましょう。美しくその環境に溶け合い、我々を包み込める、そんな力がほしい。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO53578330U3A400C1MM8000/