『三成本人をつい混同させてしまったその名優が亡くなった。加藤剛さん。八十歳』<2018年7月11日(水)>
「この人には持って生まれた、生真面目さと悲しみがあった気がする」と『筆洗』(180711)は加藤剛さんのことを表現する。そして、母親のエピソード。「ドラマ『関ケ原』で三成役・・・『わたしは辛いよ。切なくて口惜しいよ。かわいそうで涙がとまらんけよ』と泣く。『どう見てもおまえの方に理があったに』。・・・大岡裁きに子を奪い合う女の話・・・加藤さんも痛みと悲しみにその手を放す方なのだろう。『人の痛みがわかる人間になりなさい。他人の為(ため)に涙を流せる人になりなさい。そうすれば、世の中に戦争という愚かなものは無くなるから』。そう教えてくれたとは、ご長男のコメントである」。
(JN) 加藤剛さんの映画では、やはり「砂の器」である。あまり邦画を観なかった若いころ、なぜであろうか、劇場に見に行き、泣いた。若い頃も、涙腺が弱かったか。主演する俳優たちの力に泣かされた。サントラのLPレコードを買い、小説も読んだ。地図で、その場所を確認する。戦前、戦中そして戦後の日本の中で、私は加藤剛のお母さんのように自分を主人公に仕立てて葛藤していたか。私たちの心を揺さぶってくれた方々が亡くなってゆく。残念ではあるが、加藤さん、長い間ありがとうございました。私たちは、和賀英良のような辛いことが起きないように、努力します。また、加藤さんを超える三成役が出てくることを期待して已まない。