ヒトの移動活発化は感染症を予想もつかぬ地域へ

(日経「春秋」2014/9/3付) 人類の全歴史を通じ、蚊は偉大な指導者を倒し、軍隊を滅ぼし、国の運命を左右してきた――。「蚊 ウイルスの運び屋」でこう警告している。マラリア日本脳炎などさまざまな感染症が世界に与えてきたダメージを思えば、決して大げさな指摘ではないだろう。太平洋戦争のとき、ガダルカナルや東部ニューギニアで日本軍将兵をさいなんだのは飢餓とともにマラリアであった。東京の代々木公園が感染場所とみられるデング熱患者の多発は、蚊をめぐるそんな危難をあらためて思い起こさせる出来事だ。ヒトの移動の活発化は感染症を予想もつかぬ地域へと運ぶ。蚊による感染症の怖さは心にとめておいたほうがいい。かつてアフリカなどではやっていた西ナイル熱は1999年に突如として米国に上陸した。それ以後、死者をともなう流行を繰り返すようになった現実もある。
(JN) 小さな島国の日本は、地繋がりのところに比べて、海外からの危険物の侵入には比較的防衛がしやすいのだが、一度入ると結構弱い。お互いの信用があるのか、安全神話があるのか、我々には危機感が乏しい。トロイの城のように、侵入されると結構面倒である。一人感染者が出たら、それはそれだけで済まない。国内での人の流れも、量及びスピードがあり、あっという間にあちらこちらへ展開する。このようなものを後に残さないように、徹底的な対応をしてもらいたいが、相手は見えない。我々は活動する生き物であり、ウィルスも生き物、お互いの繁栄を目指す限り、闘いも永遠に続くのであろう。否、資本というウィルスが儲かると思えば、その資本の考えに基づき、病原菌を撲滅か、適当な鎮静か、野放しか、その展開は任されている。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO76540990T00C14A9MM8000/