(日経「春秋」2014/9/2付) 欧州連合(EU)の多数決は各国が1票ずつを投じるわけではない。最も多いのが独仏伊英4カ国の29票、少ないのはマルタの3票。加盟28カ国をあわせると352票になり、そのうち260票で「可決」というのが一応の決まりだ。ポーランドの持ち分は、答えはスペインと同じ27。人口3800万とはいってもドイツの8200万と比べれば半分に満たず、1その割に票の持ち分が優遇されている。今度はトゥスク・ポーランド首相(57)が次のEU大統領に決まった。東欧出身者が初めて就くEUの主要ポストである。ドイツが西からポーランドに侵攻して第2次世界大戦が始まったのは75年前のきのう9月1日のことだ。ポーランドはヨーロッパで最も徹底的に破壊された国であり、当然、ドイツ憎し、ソ連(ロシア)憎しの感情は根強いが、票の優遇はドイツの後ろ盾あってだし、トゥスク新大統領もメルケル独首相が推したという。ポーランドはドイツとソ連が一度は本気で潰しにかかった国である。その国の首相がEUを代表する。小さな話ではない。
(JN) 遠くで見ているヨーロッパであるので、様々な摩擦があろうが、お互いに憎しみを持ちながらも大人として共同体を築こうと努力をしている。それだけ第二次世界大戦の破壊は強烈で、それを二度と経験したくない思いもあり、また冷戦における経験がさらに相互理解を必要とさせたのであろうか。それに比して、というか比べばらないのであるが、日本の近隣諸国との関係は、先が見えない。それは、ドイツのように日本は東西に分断されることもなく、敗戦後、直ぐに朝鮮戦争があり、まるで戦勝国のように近隣諸国のエネルギーを吸い取ってきた経済発展を良くは思われないのであろうか。日本が疎まれるのは、安倍首相だけの問題ではなかろうが、これ以上、回顧政策をとっていては進展はない。EUのようにAUを作るとは行かなかろうが、日本はドイツに見習うことがあろう。
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