「水のないところに、蚊はたたぬ」

「水のないところに、蚊はたたぬ」
 伝染病への注意を朝日「天声人語」(2015年6月8日付)は、伝えている。
 「神経を逆なでする不愉快事は世に多く、寝込みを襲う蚊の羽音は最たる一つだ。。人迷惑は古来不変らしく、清少納言も『枕草子』で「にくきもの」に置くと。当方、しつこさに負けて、ままよと刺されることもあった。病の媒介役なのを忘れがちだったが、去年のデング熱騒ぎ以来そうもいかなくなった。東京都は今月を「蚊の発生防止強化月間」として啓発を進めている。空き缶や植木鉢の皿など身近な「水たまり」をなくしてボウフラの住み家を減らす。蚊になってから退治するより効果的らしい。「水のないところに、蚊はたたぬ」を東京都は標語にする。世界を見れば、蚊が媒介するマラリアで年に60万を超す人々が命を落とす。デング熱も約70年ぶりの確認だった。〈一つづゝ殺せども蚊のへらざりき〉子規。転ばぬ先の杖で、増やさぬ目配りは大切だ。」
 病気の予防は、その基を断ち切るのが肝心であるが、鼬ごっこのように終わらない。何せ私たちの住まいは世界の津々浦々にあり、そのすべてのところで実行されない限り、その感染を抑えることはできない。また、それに近いことを行えば、生活圏の生態系はどうなってしまうのか。また、閉鎖された空間に、その感染が広がると悲劇である。特に、病院のような体力のない人のところで起きれば、死者は多発する。私たち人類は、病原菌と闘い、その努力から長生きをできるようになりはしたが、まだまだ闘いを続けなければならない。組織としての闘いとともに、個人も体力を整え、少々の病原禁に負けない身体を作らねばならない。そして、衛生環境が良くなり、昭和30年ころは、蚊や蠅が大手を振っていたが、今は本当に少なくなった。それただけに落とし穴もありそうだ。昔、注意していたこは何であったろうか、少し思い出して、後世に伝えねばならない。