暮らしのまわりの小さきものを見失っていくわれら日本人

(日経「春秋」2013/3/17付) 春のあらしに吹かれ、黄砂や煙霧に驚いているうちに桜の季節がめぐってきた。あちこちで去年よりかなり早くつぼみがほころび、きのうは東京のソメイヨシノにも開花宣言が出た。気象庁の「生物季節観測」では、今年はウグイスの「初鳴日(しょめいび)」が横浜で平年より10日も早く、モンシロチョウの「初見日(しょけんび)」も下関で12日、静岡で6日早かった。近年は都市化の影響でとんと見かけなくなった生きものもいて、東京などではトノサマガエルやホタルの観測をやめた。生物の居場所をどんどん減らし、暮らしのまわりの小さきものを見失っていくわれら日本人である。気象庁はかつて、火鉢や蚊帳を使う時期を調べる「生活季節観測」も手がけていた。いまなら花粉マスクの使い始め、使い終わりなど陽春の移ろいの目安になるかもしれない。止まらないくしゃみを恨みつつ、こればかりはいつの世にも変わらぬ桜を見上げてみる。
(JN) 自然は常ではない。遅いときもあり、早いときもある。優しいときもあり、激しいときもある。そんな中でも、自然の美しさを喜び、またその変化に自分たち人間の勝手と無能を感ずる。この美しく厳しい自然のありがたみを我々は忘れてはならない。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO52905690X10C13A3MM8000/