ときには立ち止まり若葉の梢(こずえ)を眺めてはどうか。

(日経「春秋」2014/4/22付) 戦国武将の黒田官兵衛は、キリシタンだった。大分・中津に居城を定めた1587年のイースター(復活祭)に大規模な洗礼式を行い、多くの武将を改宗させた。いまでも教会によっては、深夜から始まるミサに、ロウソクを手に信者が集まる。夜を徹して祈りを捧(ささ)げ、賛美歌を合唱して再生を祝う。20日にかけて東京で開いた第5回「六本木アートナイト」も徹夜の催事だった。この時節、各地で開かれる祭りは、大なり小なりよく似ている。復活祭と同様、厳冬を抜け出て、やっと到来した春を喜ぶ気持ちが重なるからだ。季節ごとの祝祭には、自然のリズムに合わせて、心や体の再生を促す力があるという。戦国武将も昔の為政者も機微に通じていた。だが、忙しい現代人は季節の変化を見過ごし不調を招きがち。ときには立ち止まり若葉の梢(こずえ)を眺めてはどうか。特別な力があると信じられている、祝福に満ちた陽光がきらきらと降ってくる。
(JN) わが職場は、多摩丘陵の自然がまだ多く残るところにあり、四季の変化を感じ取ることができる。しかし、それは自然を見ようとすればであり、そうしないコンクリートに囲まれた環境で、暑さと寒さだけを感じる生活になる。更に、この壁に囲まれていても、花粉が間違えなく、時期を知らせてくれる。それは、別として、ちょっと目を横に向ければ、花が四季の変化に応じて美しく変わり、蛇、飛蝗、蝶々、団栗等が季節を教えてくれる。秘密の場所には、ホタルも現れる。若者たちには、スマホ見ながら、道を歩くのではなく、周りの自然を楽しみながら歩いて、心も目も澄まして欲しい。狭いディスプレーの中に自分を沈めず、広い世界に心を移して欲しい。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO70217740S4A420C1MM8000/