若い層から、難しい作品を背伸びして見る気質が消えた

(日経「春秋」2012/10/28付) 映画「ホテル・ルワンダ」、日本での上映予定はなかったが、映画好きの署名活動で公開が決まり、大ヒットに。6年前の話だ。テーマは重く、俳優の知名度は低い。先陣切って上映を引き受けたのが、前年末に開業した東京・渋谷の「シアターN」だった。客席数が少なく、芸術作品や社会派映画を単独で上映する「ミニシアター」と呼ばれる映画館だ。そのシアターNが、この12月で閉館すると決まった。ミニシアター、かつての隆盛がうそのように、いま逆風が吹いている。理由の一つは若者の変化。ミニシアターを支えた若い層から、難しい作品を背伸びして見る気質が消えたのだという。もう一つの逆風は技術の進化だそうだ。複製フィルムに代わりデジタル素材が映画館に届くようになる。スクリーンできれいに映すには1000万円ほどの映写装置を購入しなければならない。ならばいっそ廃業を、となるわけだ。映画に限らず、多様な作品を気軽に楽しめるのが文化的な街だろう。いい知恵はないか。
(JN) 観客数を得られないミニシアターで、芸術作品を上映していくことは経営維持が難しい。それよりも、若者に観てもらわねばならない。映画は、夢見る楽しいもの方が楽であるが、わかりにくい芸術作品への試みをすべきである。分かりにくいとは、考えてもらいたいからである。各自がそれぞれに考え、自分たちに置かれている環境を、それは身近なことから地球規模の世界まで感じ取ることである。足が攣るぐらい背伸びして、頑張ってみよう。恋人同士であろうと、語り合おう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO47777990Y2A021C1MM8000/