名酒とは「喉にさわりなく、水の如く飲める酒」だ

名酒とは「喉にさわりなく、水の如く飲める酒」だ
 日本酒の定義をすることに係り、朝日「天声人語」(2015年6月17日)は、日本酒の素晴らしさと和食ブームについて、戦中の苦しみから説明をしている。「〈独り酌(く)むこの薄酒(うすざけ)のひや酒も のめば酔ふもの水よりは濃き〉岡本大無」。戦後70年たち、うまい米と水でつくる日本酒は世界に広まっている。海外での人気は高く、去年の輸出額は10年前の2倍を超えた。そうした中で、純国産の清酒だけが「日本酒(ジャパニーズ・サケ)」を名乗れる新たなルールづくりを、財務省などが進めるという。日本の酒は、日本人が古い大昔から育てあげてきた一大芸術的創作」と発酵学の大家、坂口謹一郎だった。名酒とは?の問いに、「喉(のど)にさわりなく、水の如(ごと)く飲める酒」だと答えていたそうだ。▼和食ブームと併せ、うるわしい酒が異国のテーブルを彩ると思えば嬉(うれ)しい。
 酒の中で、その美味さは日本酒が一番であると考える。それは人それぞれであるが、とにかく日本酒である。今、和食ブームと言うが、日本酒は、食事の機嫌を取る必要はない。日本酒は、それだけあればいい。さらりと常温で飲む、美味い。この料理には、これが合うというのではなく、日本酒は、主役であり、それ以外にいらない一人芝居である。その美味さと、助けがいらないその力は、危険でもある。さらりさらりと、幾らでも飲める。しかし、それが五臓六腑に染み渡り、そして、頭と足に来て、幸せであった時間を忘れてしまう。