変わる世界に長期の国家戦略を

(日経「社説」2014/1/1付) 2014年、日本は本当に、大きな戦略を立てて、ちょっと長い視点で、復活への道筋を整えていく必要があるだろう。世界の変化の最たるものは、世の中に影響力を及ぼす地域が米欧からアジアへと移行、その傾向に拍車がかかっていることだ。アヘン戦争前である1820年の世界の国内総生産(GDP)は、アジアが世界の5割超だった。もし2030年にアジアが世界のGDPの半分を占めても、200年前にもどったにすぎない。国際社会の構造変革において、中国の軍事、経済などのハードパワーの増大を背景に、世界の力の均衡がゆらぎかねないところまで来つつある。ただ、日本が国際社会で信頼を得るには、文化や価値観などのソフトパワーが一段と大事になっている。ハードからソフトへのパワー移行も進んでいる。日本を変える突破口にしなければならないのだが、それを阻むのが反規制改革・反負担分配・反変革の「3本の釘(くぎ)」である。抵抗の釘を抜きながら国の力を伸ばしていくためにも、どんな国をめざすかの理念や目標をはっきり示せば、そこからはみ出すものも見えてくる。参考になるのが、経済人らでつくる日本アカデメイアが進めている長期ビジョンづくりだ。経済力や競争力だけでなく、魅力や尊敬、信頼といった点も含めて「日本力」ととらえ、世界的な視野から日本をデザインし直すという。長期的な国家戦略が安倍内閣に欠けているのは確かだ。それは企業についてもいえる。目先の利益が優先し、ちょっと長めの視点で成果をあげていく発想も併せ持つことが大事だ。東京海上アセットマネジメント投信の調べによると、日経平均が最高値をつけた1989年末から13年9月までの間で、現在、東証1部に上場している1700社のうち配当を含めて投資収益をもたらした企業は200社弱ある。そのうち収益の高いベスト5は(1)ニトリホールディングス(2)久光製薬(3)日本電産(4)ピジョン(5)ユニ・チャームで、以下も創業者の力が強く長期的な意思決定がしやすい会社が多い。いずれも進取の気風に富んでいるのが特徴だ。それは国家にもつながる。松方デフレのまっただ中の明治16年福沢諭吉は自らが創刊した時事新報に「日本人は今の日本に満足せんとするか」と。現代語に意訳すれば次のように書いている。「日本人が今の国力に、今の生活に満足し、文明の進行を止めてしまっても後悔しない民族だとは、自分は信じることができない」
(JN) 自分たちの力と自信の基になるのは自分たちの文化であろう。経済力あっての文化であるが、その前に幸せと価値観を考えたい。日本人と言っても多様な価値観があるはずだから国が国民に価値を押しつけるのではなく自由な考えを持っている人の育成を図ることである。それを基礎に考え意見交換ができる世を広げて行くことから、他国との関係を築いていくことであろう。そのような理念を持って他国を受け入れよう。他国との交流なくしては生存できない我が日本、人も、考えも、資本も住みやすい環境づくりがある。またそれを持って若者は世界へ飛び出して行こうではないか。国力は文化であり、それを支えるのは進取の気風に富んだ人である。
http://mw.nikkei.com/tb/#!/article/DGXDZO64794460R00C14A1PE8000/