スコットランドの独立? 金融市場の混乱を招く恐れも

(日経「春秋」2014/9/13付) 猫の命日である。神経衰弱の気晴らしにと書いた文章が大評判になり、小説家・夏目漱石が誕生する。小さな墓標の裏に「この下に稲妻起こる宵あらん」と句を記した。英国留学中も、ひどい心の病に悩んだ。息抜きの旅にも出かけた。山に囲まれた静かな町、秋の日に染まる大地と林に、ほっとした。のちに、小品「昔」で、その明るい風景を回想している。町のあるスコットランドは1707年、イングランドと合併し英国の一部となった。欧州で最も遅れた極貧の地で、生き残りの最後の手段だった。アダム・スミスはこの地域出身で、合併を徹底して支持した。時代遅れの貴族の圧政を打ち砕いたとみたからだという。18日、地域が再独立を問い、投票を行う。北海油田があれば自立できるとの思惑もあるらしい。独立派が勝つ可能性があり、首相が説得に奔走している。結果次第では英経済への打撃、通貨急落や金融市場の混乱を招く恐れもある。漱石はポンド高、物価高に苦しんだ。世界を波乱に巻き込む稲妻のような急変は防ぎたい。
(JN) 国の単位とは、どう考えれば良いのか。これまでは、武力を伴う政治により決まってきたことが多く、その矛盾に抵抗して独立運動が今も多くある。でも、我々は、小さなそれぞれの土地に縛られて、擦ったもんだする必要があるのであろうか。あるいは、国境というものは、別に地面に書いてあるわけでもなく、そこに壁がある必要があるのか。スコットランドの悩みは、リリパットの小市民にはわからぬが、大英帝国に支配されていないということがスコットランドには大事なのであろうか。嘗ての金融市場の中心であったロンドンは、21世紀に入り力を盛り返そうとしてきたが、それを許さないのが世界資本主義であろうか。ヨーロッパの西の列島にアンバランスが生じることで、世界はどんな見えない手の影響を受けるのか。否、スコットランド国は生まれないのか、それはまだ見えない。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO77045700T10C14A9MM8000/