上品で、すてきで、心のこもったもてなし  消費増は「もてなし」に

上品で、すてきで、心のこもったもてなし
 消費増は「もてなし」にあり、と日経「春秋」(2015/6/7付)。
 「昭和のはじめ、新興の国際都市東京を、多くの外国人が仕事や観光で訪れた。彼らが口をそろえて感心したのが『上品で、すてきで、心のこもったもてなし』だったそうだ。英国の外交官夫人として日本に滞在していたキャサリン・サンソムが、手記にそう記している。親切心。寛大さ。古くからの伝統。さらには自分たち自身への誇りがあってのことだろうと彼女は推測する。
いま、日本を訪れる外国人が増えている。消費額の総計は昨年、2兆円を超えた。きのうも東京・新宿の繁華街に大型免税店が新たに開業し、中国などからのグループ客で早くもにぎわいを見せている。説明の札には東南アジアや中央アジアの言葉も交じる。店員も外国人が多い。疑問にすぐ答えられてこそおもてなし、との発想からだ。どうやら誇りと親切というもてなしの要は、サンソムのころと変わらないらしい。まずは気持ちよく過ごせること。消費増はその結果と考えたい。」
 そう、「もてなし」が日本の財産である。サービスや商品を押し付けるのではなく、相手に合わせてサービスする。しかも合理的な配慮である。それぞれの予算と能力に合わせた、無理のないサービスである。お金を出せばそれなりにサービスを上げることはできるであろうが、そうではなくその範囲内での最上のサービスであるから、また、客はこちらを意識してくれるからうれしい、それが「もてなし」なのであろう。そこには、商品への自信と客への誠意があるからだ。騙し取ってやろうと「おべっか」するのとは違う。作法を大事にしながら、未熟者を魅惑し、価値観を発見させる。大型免税店がこれに当るかは疑問だが、日本は良い商品とともに「もてなし」も売っているのであろう。