どんなに魅力的な土地も、追い立てられた先なら輝きがうせよう

どんなに魅力的な土地も、追い立てられた先なら輝きがうせよう
 日経「春秋」(2015/6/6付)は、日本創成会議の「高齢者の移住先候補」の提案に提言に疑問を投げかける。「函館、弘前、金沢、別府、長崎、宮古島……。この魅力的な地名が、きのうの新聞に41も並んでいた。高齢者の移住先候補だという。昨年、全国896の「消滅可能性都市」を挙げて各地に衝撃を与えた日本創成会議の提言とあって、今回も話題性十分だろう。提言を受けて政府は、移住者向けのコミュニティーづくりを交付金で支援する方針という。妙案のように見えるけれど、それで本当に人々がその気になるものかどうか。実情を顧みず税金を使った事業だけが独り歩きするのは困る。10年後には介護施設のベッドが東京圏で13万床も足りなくなる。だから地方移住だと決めてかかることはあるまい。在宅で、住み慣れた地域で、ケアを受けつつ暮らしてもらうのが政策の基本でもある。どんなに魅力的な土地も、追い立てられた先なら輝きがうせよう。」
 日本創成会議のお考えは、この素晴らしい41の地域を年寄りだけにしようと思いたくなる。この地域に老人のための施設を中心に地域産業に活気を取り戻すのか。高齢になると環境の変化は辛いのに、高齢者のことを考えているのであろうか。新しい環境への順応は大変である。高齢者がこの41のに動くとそれぞれの人口構成はどうなのか。年齢構成のアンバランスが生じないか。私たちの生活の核は家族であり、その発展である。子ども、若者、中年、年寄りがそれぞれ居てこそ街である。年寄りが、地方創生の原動力になるためには、同じ人数以上の中年以下を動かしたい。そうでないと、この41の地域は、痴呆叢生になりはしないか。それは、更に都市の消滅を加速するのではないか。3.11の時のように、またも情報をコントロールして、個人の生き方の自由より、全体と秩序に重きを置くのか。