地方活性化のかけ声は繰り返されてきたが

(日経「春秋」2014/11/29付) 民俗学者南方熊楠(みなかたくまぐす)は、博覧強記で「歩く百科事典」と称された碩学(せきがく)は、実にユーモアあふれる人だった。昭和4年、紀伊半島を訪れた昭和天皇に進講した。このとき、熊楠は大きなキャラメルの箱に入れて標本を献上した。中身は生涯をかけて採集研究してきた粘菌だった。驚いたことに謎の生物は脳も神経もないが、迷路の最短経路を見いだす。地図上で実際の鉄道と似た路線を作る。この発見でイグ・ノーベル賞を受賞した中垣俊之・北大教授は「原始的な知性」があるとみる。地方分権の動きをみていると、その賢さに学びたくなる。地方活性化のかけ声は繰り返されてきたが、実効が上がらない。権限委譲や規制緩和も一向に進まない。これまでの失敗から学んでいないからではないか。ちなみに、熊楠が「大宇宙を包蔵する」と絶賛した粘菌には、単細胞ながら記憶や学習の萌芽(ほうが)もあるそうだ。
(JN) 地方の活性化は、自立からでるとはわかっているが、民主主義というものが浸透していない私たちは、個人の権利と義務、地方自治のありようを身体で得ていない。頭では、学習しているが、身になっていない。自分たちで勝ち得た民主主義では無いためであろうか。地域の活動においても、行政を頼る姿勢があることが多いのではないか。それを先ずは変えて行くことが、私たちの脳ミソに必要だ。いや、身体で覚えなければならないのではないか。頭デッカチではないバランスの取れた有機体であることが大事なのではないか。それが活性化を呼び起こす。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO80291420Z21C14A1MM8000/