無沙汰が高じて人を訪ねづらくなることを「敷居が鴨居(かもい)にな

(日経「春秋」2014/3/27付) ビクトル・ユゴーが言っている。「外交官は、自分の本心を漏らす以外のすべての手練を駆使する」。とはいえ、現実には心の中を隠しきれないということだろう。3人並ぶ記者会見の映像に日韓関係のいまが映っていた。オバマ米大統領を真ん中に安倍首相と朴槿恵(パク・クネ)韓国大統領。気まずくなって久しいお隣同士の間柄に気をもむ仲人が尻をたたいての顔合わせである。無沙汰が高じて人を訪ねづらくなることを「敷居が鴨居(かもい)になる」というが、そうなる前にぜひ互いの敷居をまたぐ必要があろう。ベルリンの壁が倒れ世界が激動のなかにあったころ、ミッテラン仏大統領は「馬たちが同じスピードで走らなかったら、馬車は事故を起こします」とブッシュ米大統領(父)に説いたそうだ。会見に並んだ馬ならぬ3人の引く馬車には、東アジアの平和と安定という傷つきやすい客が乗っている。事故を起こされては困る。
(JN) トロイカは、中央でリードする馬に力があり、左右の二頭に常識的力があれば、事故を起こさず走り続けることができよう。でも、何せ左右の二頭は、二世で周りの力に支えられての御仁ゆえ、支える人たちの意向に沿わなければならず、よそ見をしている。自分たちが国家の代表であることではなく、自分たちを支えている人たちの思いを代表しているのではないか。そんな狭い視野と思考では、東アジアの平和と安全は儘ならない。過去の問題は大事であり、共通認識を取ることが必要であるが、それとともに今ある危機を一緒に考えられる大人の指導者が欲しい。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO68932640X20C14A3MM8000/