「これ以上、拘置を続けるのは耐え難いほど正義に反する」

(日経「春秋」2014/3/28付) 「著しく正義に反する」。今回はこれでは意を尽くせない、と静岡地裁で「袴田事件」の再審請求審を担当した裁判長は考えたのだろう。再審開始を認めたうえで、死刑が確定していた袴田巌さんをまずは釈放するよう命じた。いわく「これ以上、拘置を続けるのは耐え難いほど正義に反する」。一家4人が殺されたこの事件で、袴田さん有罪の決め手とされたのは公判中に見つかった衣類だった。きのうの決定はこれを捜査機関が捏造(ねつぞう)した疑いがあると指摘した。暗黒捜査、暗黒裁判というほかない。「耐え難いほど正義に反する」。決定文の言葉は、過去の司法判断も含めた事件の経緯そのものに向けられているのかもしれない。証拠捏造の指摘をよそに、それでも検察が抗(あらが)おうというのなら正義の在りかがいよいよ見えなくなる。
(JN) 憧れの捜査機関がねつ造を行っていた。司法が何年にもわたり検察側の方を持ち、第三者としての立場を逸脱していたのか。こんなことは聞きたくもないことであるが、今現在の事実である。「正義」とはなんであろうか、検察側の「善」が「正義」になっているのか。否、「善」ではなく、その時の都合である人を犯罪者に仕立て上げるのである。何時、私たちがそのような立場になるかもしれないと思うと恐ろしい。自分の成功のために人を犠牲にすることができるその集団行為は、「著しく正義に反する」いじめと同じだ。法的解釈は世の中の変化とともに変わろうとも、「正義」の在り方は変わっては困る。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO69000240Y4A320C1MM8000/