一人前の松林になるまで50年、60年

(日経「春秋」2014/3/9付) 「浜道や砂から松の若みどり」(蝶夢)のような景色が、何年か先、きっとよみがえる。松林をもう一度つくろうという人たちの頑張りに、そんな確信がわいてくる。宮城県名取市では、地元の「再生の会」に非政府組織(NGO)が協力して、クロマツの種をまいて苗をつくることから始めた。これから6年間に50万本を植林するという。栄養分のない土壌と寒風に乾風、二つの「カンプウ」に痛めつけられ、「砂漠の植林より難しい」のだそうだ。専門家が植えるが、それでも3割ほどは間もなく枯れてしまうという。3年前に流された松林は伊達政宗が命じて造成させた。400年前の話である。老松が若松に代わり、やがては散歩する人を楽しませるだろう。そして一人前の松林になるまで50年、60年。その姿を、いま頑張っている人の多くは見ることがない。
(JN) 生態系を戻すのは容易ではない。それでも、自然による破壊であれば、地道な努力が実り元に戻っていく。私たちは、時間をかけて作り上げて行くのであるが、放射能汚染の地にも同様であるのか。それは何世代もの長い道のりになるのか。2011年3月まで福島第一原発付近に住んでいた人たちは、その地に戻る事ができるのであろうか。名取市の海岸に一人前の松林ができるのに60年掛かると言うが、福島第一原発の地に人々が生活できるようになるには何年必要なのか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO68006550Z00C14A3MM8000/