「嫌いだけど、いないと物足りない」という強敵を相手チームに求める

(日経「春秋」2014/1/24付) 1964年、ヤンキースは転落への曲がり角にあった。この年から惨状が11年続くのである。「この地球上で時間が始まって以来ずっとWSに出場してきたように思えた」と書かれた名門は、半世紀後のいま、成績だけなら普通の球団にすぎない。されどヤンキース、いまだ話題になるのが金に飽かせた補強。巨人とよく似ている。田中将大投手(25)がヤンキースと契約を結んだ。年俸にすれば約23億円。日本シリーズで巨人をやっつけて判官びいき喝采を浴びた男が、今度は立場を180度変えてピンストライプのユニホームを着る。「くたばれ!ヤンキース」と題する本に「われわれはヤンキースを嫌う一方で、同じくらいヤンキースを必要としている」とある。アンチ巨人に重なる屈折したファン心理である。彼らは「嫌いだけど、いないと物足りない」という強敵を相手チームに求めるものだ。そんな「悪役」になる素質を、マー君には十分感じる。
(JN) 強いことは「悪役」になるこのプロ野球界。アンチジャイアンツになりそびれた私は昨年の日本シリーズは悩み続けた。原発推進正力松太郎読売ジャイアンツを応援すべきでないと楽天イーグルスを応援すべきだと思うも、あの負けなしのマー君を遣っ付けるべきだとも。そのマー君ヤンキースに入る。是非とも憎たらしいほど勝利を挙げてもらい、憎たらしい悪役になってほしい。そして、日本プロ野球に次の憎き投手が生まれることを望みます。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO65787460U4A120C1MM8000/