さて時代はどこへ向かうのか

(日経「春秋」2013/12/24付) 「きっと君は来ない ひとりきりのクリスマス・イブ――」。山下達郎さんの「クリスマス・イブ」だ。発売されたのは1983年、ちょうど30年前である。リリースしても、しばらくはあまり注目されなかったという。それが88年にJR東海のCMに使われたのをきっかけに大ヒットする。世はまさにバブル期で、これを聞くとあの当時のさんざめきを思い出す人も多いはずだ。この曲に重なるように、バブル期のクリスマスは「恋人と過ごす大切な日」になった。それもお金を惜しんではならぬ、とあって高級レストランやシティーホテルに予約が殺到し、定番のプレゼント「ティファニーのオープンハート」が売れに売れた。昨今の地道な「婚活」とは違って、男も女もずいぶん高揚していたのだ。さかのぼれば高度成長期にはバタークリームのケーキが家庭に登場し、鶏のもも焼は大ごちそうに見えた。それにだって幸福を感じたのだから社会はあっという間に変わったわけだ。そういう激動を経て失われた20年を過ぎ、さて時代はどこへ向かうのか。有為転変を思い、しみじみ「クリスマス・イブ」など聴くとする。
(JN) 明日のことも予測がつかないこのスピードの時代を30年前に想像できなかった。このスピードは永遠に加速していくのか。ものの溢れるこの時代の中、もう少しゆっくりどんな生活が幸福なのか考えられないか。巨大資本に押し付けられた価値観は今後どのようになって行くのか。我々の幸せは本当に何であるのか。なぜ我々はクリスマスを祝うのか。イエスを信仰していない日本人はその必要性を何に求めるのか。宗教は違っても、静かに今年を振り返り、人生を振り返り、今後の生き方を考えてみよう。君が来なくとも独りきりでも、考えてみよう。Silent night,Holy night ・・・・・・・・・。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO64488750U3A221C1MM8000/