「地方にこもる若者たち」

(日経「春秋」2013/12/23付) どこまで行っても、新しい店が現れる。流通業大手が先週末に開いたショッピングモールを歩いてみた感想だ。こうしたモールの多くは地方の郊外か田園地帯に多い。その存在が若い世代の地方志向に拍車をかけていると分析するのは若手社会学者の阿部真大さんだ。かつて若者の多くは東京にあこがれた。今は違う。車でしばらく走ればショッピングモールがある。田舎でも大都市でもない「ほどほど楽しい地方」という生活圏ができたのだと阿部さん。モノも娯楽も手に入る。車で動けるから自然も身近だ。しかし将来に不安もある。その筆頭が子育てだという。商店街が消え、地域の人たちと接点を持ちにくくなったことも原因では、と阿部さん。楽しさ、便利さの次に街や企業が提供すべきものは何か、垣間見える。
(JN) 私たちは将来に何を期待するか。現状でも多くを望めず将来はそう簡単に見通せない。若者は東京にも地方にも将来を期待していないというか、どうにかしようとしなくなりこもるのか。群れてこもるが、人の動きの中にこもる。完全に流通の中に取り込まれた労働力は心も体もショッピングモールに呑みこまれてしまった。地方という表現はそれぞれの地域であり東京もその一つの地方である。一緒にいるが心通じていない、一方的な講義が行われている大教室のようであるショッピングモールから何が生まれるのであろうか。その中で若者の心は眠ってしまうのか。小教室での双方向コミュニケーションの地元の商店が消えていく中で私たちは何かに気づかねばならない。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO64473660T21C13A2MM8000/