旅の神髄はスーパーにあり

(日経「春秋」2013/5/13付) 旅の神髄はスーパーにあり。出張でも観光でも、どこかに出かけたときは地場のスーパーをのぞいてみると面白い。土産物店には置いてない、普段づかいの食品がそこここに控えているはずだ。最近は、スーパーめぐりがちょいとブームでもあるのだろう。「日本全国ご当地スーパー掘り出しの逸品」とか「おいしいご当地スーパーマーケット」といったマニアックなカタログ本まで書店に並んでいる。宮本常一は、生涯をかけたフィールドワークで膨大な記録写真を残した。その大半はよろず屋の店先や日用品の看板や行商の様子や、つまり「日常」である。現代の地場スーパーの棚にだって、その気配は漂う。たとえばあちこちでよく出くわすのは、土地ごとの麩(ふ)のかずかずである。あまたのメーカーがつくり、さまざまに調理して食べ続ける日本人がいる。世の有為転変に踊らないものが、たしかにそこにあるのだ。
(JN) 出張の多くあった部署にいたころ、初めのうちはガイドブックを参考にしていたが、次第に地元の人たちが行く店に行くようになった。安易な方法としては宿泊地のフロントの方に、よく皆さんが行く居酒屋を聞いた。もっと手を抜く時は、デパートやスーパーにて食事を買い込む方法である。凡人である私は、宮本常一のように記録を取って行かなかったが、彼の父親の家訓のようにまずはその土地の高いところ、或いは地元博物館へ行き、そこを鳥瞰することから始めた。そして、歩き回ることで、そこのローカルなことを発見をすることが楽しみであった。旅はまずスーパーから始めてみよう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO54951000T10C13A5MM8000/