効率を極めた現代の小売業が、商いの原点に戻りつつある

(日経「春秋」2014/7/14付) 夜更けのコンビニエンスストアに常連客が集まり、仲良くお茶会を開く。30年近く前に放映されたテレビドラマ「深夜にようこそ」(山田太一)の印象的な場面だ。コンビニで働き始めた中年の男性店員が、マニュアルに縛られず新風を吹き込む物語だった。忙しい人が必要なものを手早く買って出る。そんなコンビニが、時は流れ、現実のコンビニが山田さんの描いた姿にだんだん近づいてきた。月刊誌「日経トレンディ」最新号が、繁盛店の店長を集めた覆面座談会を載せている。「いれたてコーヒー」に固定客がついた。今では午前中の店内は「高齢者のたまり場」となった。カップ片手に客同士が語り合う図は、先のドラマを思わせる。セブンイレブンは店内の一画にテーブルとイスを並べ、買ったものをその場で食べられるよう工夫した店を相次ぎ開いている。必要なモノを日々売り買いする市場(いちば)は、もともと、近所のなじみ同士が顔を合わせ、言葉をかわす交友の場でもあった。効率を極めた現代の小売業が、商いの原点に戻りつつあるようにもみえる。
(JN) コミュニケーションの場は、様々な場面で必要である。それは、主となる流れとは別に情報交換をする場である。なんてことのない話から面白い話に展開する。仲間も広がる。禁煙子供たちは、ネットでのつながりが重要になり、いじめも起きる。最近のある調査では、重要な相談も、面と向かってよりウェッブサイトという話もある。しかし、これは人と人との関係ではなく、人と情報機器との関係であり、年寄りにはとても寂しい。人恋しくなる。昔は、様々な商店でのコミュニケーションがあったが、大型スーパーマーケットにより町の商店が潰れて行った。スーパーマーケットでは、沢山の人が沢山の商品の中で流れて行き、町の商店のようなコミュニケーションができなくなった。そこへコンビニが、町の商店の力を復活させてくれた。巨大な商人の流通の中で、私たちは人間性を忘れず、仲間のつながりを大事にして行きたい。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO74205750U4A710C1MM8000/