祖母の早紀江さんは別れぎわに「希望ですよ」と

(日経「春秋」2014/3/18付) 歌人斎藤茂吉はたいへんなカンシャク持ちで、いつ雷が落ちるかと家族はひやひやしていたらしい。ところが孫のことになると違った。およそカンに障りそうな足音まで「可愛い」とはほほ笑ましい限りだが、孫への愛情とはそういうものだろう。北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの娘と対面かなった祖父母の感激も、だから察するにあまりある。しかもわが子はいまも行方が知れぬ。その面影を、孫の顔立ちや挙措に感じては涙がこみ上げたに違いない。ウランバートルに双方が出向いての、極秘裏の面会だったという。きっとウンギョンさんも厳重な監視下にあろう。それでも祖母の早紀江さんは別れぎわに「希望ですよ」と語りかけたという。被害者みんなの足音を聞ける日が来ると信ずる心に、しっかり寄り添いたい。
(JN) 近くて遠い北朝鮮。物理的距離だけでなく、国の指導者たちが何を考えているのか、何を価値判断としているかもわからぬ、遠い国である。でも、どんなに遠かろうが、肉親の絆はそうではない。自分の子供がこのような拉致に遭っていたら、親として何ができたであろうか。ニュースでの情報だけであるが、横田ご夫婦がお孫さんと会ってのその感激いかなるものか、泣けてきてしまった。過去に何時まで我々は引っ張られて、悲しい思いをしなければならないのか。私たちの未来の目標は過去の延長ではない。これを機会に希望を胸に目標を持とう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO68455220Y4A310C1MM8000/