球を投げられる距離が20%、6メートルも縮んだ?

(日経「春秋」2014/10/16付) 「たけしくん、ハイ!」に「野球しててもさ、妹を背中におぶって、レフト守ってるやつがいたんだもんなぁ。そんで打てないから、守るだけなんだもん。……それでも、仲間入って野球やりたいんだよね」。男の子の遊びといえば野球。そんな記憶を持つ世代は50代半ばか60歳になっていようか。文部科学省の調査で、走力や俊敏性など子どもの運動能力が一体に向上するなか、ボール投げだけが目立って低下していることが分かった。たとえば10歳の男児は、東京五輪の年からの半世紀で投げられる距離が20%、6メートルも縮んだ。そのニュースのあと、法律を変えて射撃競技用の空気銃を使える年齢を14歳から10歳に引き下げるという報道があった。6年後の東京五輪に向けた強化策だという。じつは、もう野球も遊びではなく、チームに入り指導を受けるのが当たり前なのかもしれない。そこにすごい球を投げる子がいて、学校にはボールを投げたことのない子が増えている。少年よ、銃の撃ち方は知らずとも球の投げ方くらいは……。いや、旧世代の繰り言である。
(JN) お昼休みは早々と給食を終わらせ、校庭へ行きたいが、みんなの終わるのを待たねばならない。「ごちそうさまでした」を合図に急ぎ、校庭へ。授業が終わればまた校庭へ。校庭に男の子が集まれば野球の真似事が始まる。日曜日も、広場で始める。四方八方で、ゲームが展開され、球が後ろから飛んでくることがある。そんな環境で、運動能力を鍛えた。校庭も、広場も、場所取り合戦も大変であった。一般庶民の子どもたちは、野原で野球ができなければそれはそれで何かを考えて、遊びを始める。男女や年齢を考え、アドバンテージだってあった。家では遊びができる環境もなく狭いし、外へ出て行った。そんな子供が、大人になっても、昼休みは早々と食事を済ませて、職場環境が良ければ、野球の真似事をしただろう。あるいは野球談議に花咲かせた。日曜日は早起き野球に繰り出す。そんな時代もあったかもしれない昔話だ。もう、肩は衰え、スピードガン90キロ台だ。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO78452950W4A011C1MM8000/