「人物写真帖」がはじめて公開されている

(日経「春秋」2013/2/23付) 昭和38年に伊藤博文の千円札が発行された。と、お札を見た新橋だか築地だかの待合の内儀(おかみ)が「まあ、おなつかしい」と言ったという。嘘かほんとか、作家の山口瞳がエッセーにそんな逸話をのこしている。さて、皇居・三の丸尚蔵館で日本の近代化を背負った懐かしい面々の顔見世、明治天皇が命じてつくった「人物写真帖」がはじめて公開されている(3月10日まで)。肖像写真の被写体はざっと4500人。撮影は明治12年から13年にかけて、写真に撮られるのがまだ当たり前ではなかったころだ。しかも天皇が身近に置こうというのだから、一葉一葉にピリリとした緊張感が宿る。尚蔵館から皇居・東御苑をしばらく歩くと梅林、人だかりがして、かざされた携帯電話や立派な一眼レフがシャカシャカ音を立てる。思えば、この国の写真の普及にも一役買ったという「人物写真帖」から、130年以上たっている。
(JN) 今ならスマホでパシャ。写真に「いいね!」、誰もが容易く記録を楽しめる。でも、その時代は取る方も取られる方も真剣であったろう。日本を創ってきた人たち、どんなお顔であるのか、拝見しに行こう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO52051120T20C13A2MM8000/