流の芸を見たい人だけが見てくれればいい

(日経「春秋」2013/4/2付) 大正期の「中央公論」、マンネリが気になると社長が「少し新人にも原稿を頼んだらどうか」と忠告すると、辣腕で知られた編集長の滝田樗陰(ちょいん)は言い放ったという。「中央公論歌舞伎座です」。こころは「一流の芸を見たい人だけが見てくれればいい」。まして今日、雑誌だって歌舞伎だって、お高くとまっているだけで長続きするはずもない。5代目の歌舞伎座がきょう開場する。初代が誕生したのは124年前、明治憲法発布の年である。芝居小屋を思わせる言葉にも残る江戸の香を懐かしみつつ、新しい器で見物する新しい芝居にわくわくする。3階の一角に、明治からの歌舞伎を担ってきた物故役者73人の写真が並んでいる。一流は当たり前として、伝統、革新、冒険、親しみやすさ。そして、ほどほどの商売っ気……。
(JN) 客を無視しては商売は成り立たぬ。しかし、商売する者も客に媚を売るのでは能がない。此方側からの試みを行うことなのであろう。何れにしても、124年も続く芸能、その魅力があればこそだ。雑誌界でも、1899年より続く「中央公論」という名称も100年を超えており、中央に位置しているか否かは別として、まだ魅力ある雑誌である。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO53493260S3A400C1MM8000/