「時の娘」が姿を現すのだろうか

(日経「春秋」2013/2/8付) 「真理は時の娘で、権威の娘ではない」。この言葉を書名に生かしたミステリー小説がある。英国の作家ジョセフィン・テイの「時の娘」だ。大ケガをして入院したロンドン警視庁の警部が、ベッドの上で史料をあれこれとひっくり返して歴史上の人物の汚名をすすぐ、というのが筋書き。はじめて世に出てから60年以上たった今でも、優れた歴史ミステリーとして評価は高い。そして警部が汚名をすすいだ人物とは、15世紀のイングランド王、リチャード3世だ。これを警部は、後世の権力者によるぬれぎぬだと結論づける。持ち前の刑事魂をはたらかせて。英国の中部で最近、長らく行方不明だったリチャード3世の遺骨がみつかったそうだ。遺骨から復元された顔は悪逆というイメージにはほど遠いという。死後500年あまり。「時の娘」が姿を現すのだろうか。
(JN) 真実はその都合に応じて変えられていく。それが明らかになるのは、その権威の強さによるか、専制力によるか。お隣の大きな国やその子分の国の真実も時がやがて明らかにしてくれるのであろうか。我が国のような専制力のないような国でも、時の娘はなかなか現れない。否、我が国の場合は皆が都合良く忘れてしまうのか。しかし、福島第一原発のことは早く知りたい。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO51509980Y3A200C1MM8000/