ノーベル賞授賞式の田中熙巳さんの呼びかけに『あぶくま抄(241213福島民報)』は思う▼いわゆる「第九」は人類愛を歌う。一年の歩みを振り返り、新たな年の幸福を思い描くのにふさわしい壮大な楽曲だ▼作曲者による初演は200年前の1824年。自らウィーンの劇場の舞台に立ち、構想30年の大作を披露。「すべての人々は皆兄弟となる」の合唱が満員の聴衆を魅了▼ノーベル賞授賞式の会場に、人類愛を呼びかける言葉が重く、深く響いた。被団協代表委員田中さんは長崎での被爆体験を語った。「想像してみてください。直ちに発射できる核弾頭が4000発もあることを」▼授賞式に合わせ、日本の高校生平和大使が現地の高校で核廃絶を訴えた。未来へ「皆兄弟」の思いを伝える。若人の情熱から、世界を動かす友愛の大合唱がきっと生まれる。
(私は思う。)200年前にこの合唱に感動した人々はその後平和に過ごせたか。人類の平和を愛する人々がなぜ今も戦争を続けているのか。なぜ戦争をすることを選択するのか。そのために、なぜ核爆弾が準備されるのか。互いを信用できないからか。信用できるのは金だけか。「つめたく引き裂いたものを、不思議な力でふたたびとけ合せる」のはいつのことになるのか。
*画像は、Beethoven Symphony No.9/Saitou Kinen Orchestra/2002(PHILPS)より。(訳:喜多尾道冬)