『#駅弁を失ったら』

『#駅弁を失ったら』<2022年10月26日(水)>

 鉄道と駅弁を『春秋(221024)』は思う▼月刊誌「時刻表」の使い道は広かった。鈍行の夜行列車では枕代わりに。巻末の旅館一覧はネットの無い時代に重宝した。楽しみは各ページ欄外の駅弁案内▼1964年の時刻表を見ると、東京駅の駅弁の筆頭はこの年に誕生したチキン弁当(200円)。価格は浜松駅のうなぎめしと同じで熱海駅あじ押ずしの2倍という高額品だった。これら工夫を凝らす駅弁は「特殊弁当」と呼ばれ、白米とおかず数点の「普通弁当」と区別された▼今、駅に豪華な弁当がずらりと並ぶ。お代は1850円也。シンプルなチキン弁当も健在だ。値段は安めの900円▼日高本線、鉄道の大半は廃止されたが、終着点の様似駅で売られていた名物、つぶ貝弁当は地元の手で復活し、全国に通信販売する。「駅弁を失ったら、日本の旅も味気なくなる」。映画評論家、瓜生忠夫さんの随筆の一節だ。鉄道も駅弁も、実用品として生まれ、それ以上の何かに育った。

 (私には)旅と言えば、駅弁であった。でも、その関係は薄らいでいる▼列車での移動の大事な友であった。ここ3年、遠出というものがなく、駅弁と縁遠くなってしまった。最後の駅弁は何であったろうか。東京駅でパンを買ったかな▼新幹線のような忙しない列車に乗ると、弁当がいらなくなる。いまや自宅で、スーパーマーケットの駅弁かな。

#鉄道,#時刻表,#チキン弁当,#うなぎめし,#つぶ貝弁当