大英帝国、SNP大躍進は何の兆しか。

大英帝国、SNP大躍進は何の兆しか。
(日経「春秋」2015/5/9付) 「知の怪物」の南方熊楠は、8年間ロンドンに遊学。世はビクトリア朝の末期。パックス・ブリタニカ謳歌する都。当時の日記をみると、ハイドパークのスピーカーズコーナーへ頻繁に立ち寄っている。「無神論の演舌(演説)を聞く」「ロシア人、国状を述べ泣く」。自由な言論の聖地で、思潮や世論が形作られて行くダイナミズムを肌で感じていたのだろう。今の労働党の前身の一つ、独立労働党の結成は彼が滞英中の1893年だ。今回の選挙、結局は保守党が引き続き、政権のかじを取ることになった。一方で、地方分権や高福祉、核兵器廃棄を掲げるスコットランド民族党(SNP)も50議席超と、大幅に議席を伸ばしている。熊楠の遊学中に誕生した労働党だが、1920年代には選挙権の拡大もあり、それまでの保守・自由の二大政党制を突き崩すに至った。大英帝国に落日が迫り、米国が「永遠の繁栄」に向かう頃だ。ほぼ1世紀後。SNP大躍進は何の兆しか。日本なら鎌倉期、13世紀を淵源とする英議会の理性は英国をどこへ導くだろう。
(JN) ある一部の国では、選挙の闘いで一喜一憂しているが、どうも、世界の広い範囲で生死をかけた戦いが続いている。このような一見平和は、強力な破壊力によって守られているのか。それとも、巨大な資本が一部のこの地域に平和を齎し、そのしわ寄せが他の地域へのアンバランスを強いているのか。世界的なアンバランスと、それぞれの国の中におけるアンバランス、今のこのアンバランス維持したいものがいれば、これを崩した者もいる。それぞれがいかに上手に連帯を築いていけるか。今のところは、弱者側は連帯を組む能力がなく、更に弱体化して行くが、それぞれの集団にも生命体のように生成発展没落がある。その一つの表現がSNPの飛躍やその他の政党の丈比べなのかもしれない。沈みゆく大英帝国の中で、まだメリー・スチュワートとエリザベスの闘いが続いているのか、これからの議会の動きが楽しみである。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO86566820Z00C15A5MM8000/