幼い日の情熱を保つのは難しい。可能性を追い続けた。

(日経「春秋」2014/10/9付) 宮沢賢治の作品には様々な石が出てくる。小学生のころから熱中し、「石コ賢さん」と呼ばれた。銀河に浮かぶ地球。億万年の歴史が凝集した鉱物が放つ輝きに心奪われた。ノーベル物理学賞を受ける赤崎勇教授も虜(とりこ)になった。父がくれた標本箱を眺めて眠った。石ごとに光沢が違う。結晶の成長度で、形も変わる。そこから青色発光ダイオード(LED)開発につながる結晶へのこだわりも芽生えた。ピカピカの結晶を求め続けた。あまりの難題に失敗が続く。困難さにライバル研究者が次々に脱落した。それでも「我ひとり荒野を行く」と諦めなかった。材料の窒化ガリウムに着目したのが40歳、成果が出たのは50代後半だった。ほぼ20年かかった。初めてできたときは、コバルトブルーの光が目にしみるように感じた。幼い日の情熱を保つのは難しい。ひたすら、結晶が持つ可能性を追い続けた。気がつくと、LEDが発する青い光で、白熱灯の時代に終わりを告げ、世界に革命を起こしていた。
(JN) 子どもの時にどんな啓発を受けただろう。私も石には随分興味を持ったが、赤崎先生のようには進まなかった。今は、墓石をどうするかぐらいであろうか、また死んだら墓石にLEDでもつけてもらおうか。こんな考えでは、地道に20年の研究などできるはずもない。自分の無能さを嘆いても仕方ないが、それでも子供時代の興味は大事だ。また、可能性に諦めない粘りとパワーを子供たちにつけてもらいたい。今の子供たちは、ゲームやネットからの模擬体験の機会が多いのであろうが、やはり実際に触ったり、行って見たり、一緒に行動したり、実体験も大事だと私は考えるが、もう今の子供たちはバーチャル・リアリティーの世界での体験が新しい何かを生み出す力となるのであろうか。とにかく、何かわからぬが、それぞれに心を虜にするものを見つけて欲しい。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO78184200Z01C14A0MM8000/