ぞみ1号の出発は開業時と同じ東京駅19番線だ

(日経「春秋」2014/10/1付) 分刻みで、次々とホームに滑り込んでくる。次の駅の到着時刻に狙いを定めて、するすると加速しながら走り去る新幹線の後ろ姿は凜々(りり)しい。昨年の遅延時間を平均すると実に54秒である。なぜこんな離れ業ができるのか。運転士や車掌は、私たち乗客が目にする時刻表とは別の、秘密の運行表を持っているそうだ。そこには15秒単位で発着が記されている。遅れてはならないし、早く着いてもいけない。これぞ日本の技術の神髄。米国のビジネススクールの討論授業で、得意げに発表した日本人学生がいる。時刻表を映し出すと、まず感嘆の声が上がった。ところが「たしかにスゴイけどまるで効率を競う日本の工場の生産ラインみたいだ」と感想が出る。そこから顧客への「おもてなし」の本質とは何かと議論が広がった。一日の乗客42万人。50年間で乗客の心も少しずつ変化した。1分や2分の時間よりスーツケースの置き場が欲しいという外国人旅行者もいる。きょう午前6時0分、下り始発のぞみ1号の出発は開業時と同じ東京駅19番線だ。変わり続ける期待を乗せて、日本の技術が次の旅に出る。
(JN) 小学生であった私、1964年の夢の超特急をこんなに生活の中で当たり前に使うとは、想像もしなかった。生活の一部として、日々、ビジネスから旅行まで、楽しく速やかに遅れず、歴史を刻んできた。このバランスの良い超特急は、常に改善され世界をリードしている。私たちには、時間の通りに来て、時間の通りに出発する。それが当たり前である。そして、過密ダイヤであるから、行けば列車はあり、それに乗れる。でも、これは、東海道新幹線の話であり、過疎地を走る廃線寸前のところはそうはいかない。旅はそこに面白みがあるが、生活者にはこの格差は辛い。国は、この格差を解決する旅に行く気はあるのだろうか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO77793970R01C14A0MM8000/