1杯の珈琲を求め人が集う交流がドラマを生む

(日経「春秋」2014/9/8付) 江戸の狂歌師、大田蜀山人は月を愛した。本業は幕府の実直な役人だった。大阪の銅座や長崎奉行所にも転勤した。長崎には、英彦山から上る月を詠んだ歌碑も残る。外国船が近海に現れ始めたころで、ロシアの特使レザノフと会見している。オランダ船でコーヒーを飲み、日本初の体験記を残した。ここまでの浸透は夢想もしなかっただろう。いまや日本は世界4位の消費国。年40万トン以上を輸入、週に平均10杯以上飲む。明治以降、誕生した街の喫茶店が長く普及の核だった。音楽喫茶などの多様な文化も生んだ。人々の社交の場を提供し続けている。モントリオール世界映画祭で審査員特別グランプリを受けた映画「ふしぎな岬の物語」は喫茶店が舞台。吉永小百合さん演じる店主が入れる1杯を求め人が集う。交流がやがて驚きのドラマを生む。蜀山人も観月の集いの効力をよく知っていた。今夜は十五夜カップを手に「中秋の名月」の風雅を味わってみてはいかが。
(JN) 十五夜は、本日、9月8日であったとは、忙しいわけではないが忘れていた。季節感と言うか、自然を感じることを忘れている。職場は、自然に囲まれているので、職場を出る時間がお天気との関係を含めて良ければ、是非とも十五夜を拝んで帰宅したい。そして、そのイメージを頭に記憶し、妻の本日のご報告を聞きながら、晩酌をし、その後、デザートに饅頭と珈琲といきたい。できれば、吉永小百合さんのような女将のいる店で、珈琲でも酒でもいただくとなどと贅沢は言いません。こちらの話も少しは聞いてくれる妻を前にできることをお月様に感謝し、珈琲の香りに浸りながら秋学期のドラマを展望したい。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO76760150Y4A900C1MM8000/